言葉と心

フランスおじさんのオノマトペ

フランスおじさんとの会話は、日本語。
なのに、時々、何を言っているのかわからない時がある。

おじさん:「パチョンしたね」
私:「『パチョン』って、何をしたの?」
おじさん:「こうやって、パチョンしたね」

右手を素早く、叩き付ける素振りの時もあれば、手をパッと花が咲くように広げ、投げる素振りの時もある。

私:「だから、その『パチョン』って、どんな事をしたの?」
おじさん:「だから、こうやって、パチョンしたね」

結局、その「パチョン」は、何か急激な衝撃が加わったのだろうと想像はできるけれど、具体的に何が起こったのか、よくわからない事が多い。

また、おじさんの言う「ズズズッ」もわからない。
「ジ」と「ズ」の中間の音で、「ズズズッてなったね」と言う。
この「ズズズッ」の時は、仕草も何を意味しているのかわからない。
おじさんの「ズズズッ」は、何が起こったのか、結局わからないままになる事が多い。

フランス人と日本人では、擬音の表現の仕方が違うようだ。
おじさんが擬音を使う時は、大体が意味がわからない。
でも、大抵、突っ込んで聞き出す程でもないので、「あ〜、そうなんだ〜」と返事をしておく。
おじさんは、伝わったと思って満足しているので、二人とも平和な時間が過ごせる。


世の中には、私のように、違う国の人が使う擬音で、ナンカ違うな〜と感じている人がいた。
「グル・グル」の季節がやって来る! 2003年5月25日」で、日本人のダンナさんとフランス人の奥さんの擬音についての事が書かれていた。

「ゴク・ゴク」というオノマトペ(擬音語)を、フランス語では「グル・グル」という。

…(省略)…

フランス語では「グル・グル(glou-glou)」は、ビールを一気飲みする時などの「ゴク・ゴク」とか、お酒を注ぐ時の「トクトク」とかいう感じを表すオノマトペなのである。

…(省略)…

でも、日本人としては、「グルグル」なんて言われても、ビールを一気に飲み干した感じは全然、しないよね。
やっぱり、ゴクゴク!

耳慣れない擬音というのは、何度言われても、どうしてもナンカ違うな〜という感じになる。
まあ、擬音を使って喋るような出来事は、深刻な会話でないから、大した問題ではないけれどね…。


そして、この引用させて頂いた文章にも出て来た、オノマトペ。
フランスおじさんが、「オノマトペって言葉は、フランス語ね」と言う。
その事をネットで検索すると、いくつか発見。

「オノマトペ」ならフランス語です。日本語では、主にこっちを使います。
英語の場合は、「オノマトピア」と発音します。

「オノマトペ」の語源は何語なのでしょうか? 検索してみてもギリシャ語、フランス... - Yahoo!知恵袋

オノマトペという単語はフランス語ですよ。知ってましたか?onomatope(')eと書きます(古代ギリシャ語から出来た言葉)。

フランスのオノマトペは? - フランス雑学のメリメロ

onomatope(')eと書きます”の綴りは、「e」の上に「'」と付く文字なのだけれど、上手く表示出来なかったので、e(')としておいた。


このオノマトペ、何故、わざわざフランス語で言うようになったのかしら?と、検索してみたら、何故なのかは、見つからなかった。
そして、どうやら、フランス語の“onomatope(')e”と、日本語の“オノマトペ”は、別物らしい。

この“擬音語”と“擬態語”を、日本人は「オノマトペ」と呼んでいます。「オノマトペ」っていう言葉は、そもそもはフランス語。英語では、「オノマトピーア」。フランス語や英語では、主に擬音語しか意味しない。フランス語や英語には「シーン」とか「ムチムチ」みたいな擬態語はすごく少ないですからね。そもそも擬音語も、日本語よりずっと少ないんですけどね。でも、日本語には、擬音語と擬態語をまとめて呼ぶ言葉がなかった。そこで、「オノマトペ」という言葉をフランス語から借りてきて、擬音語と擬態語の総称にしっちゃった。だから、フランス語で言う「オノマトペ」と日本語で言う「オノマトぺ」の意味は、ズレているのね。

インタビュー連載・ニホンゴまざぁ/recre編集室: 音をことばにする、ということ 山口仲美さん

日本語の“オノマトペ”は、“擬音語と擬態語”の両方を合わせた意味だったのか…。
「シーン」とか「ムチムチ」みたいなのを擬態語と呼ぶのだったのか…。
学校できっと習ったはずだけど、覚えていないな〜。
そして、この記事には、他にも色々、興味深い事も書かれている。

では、日本人でも感覚が変わると、新しいオノマトペが生まれるんですか?

そうですね。ですから時代によって、オノマトペも変化していく。大体4割くらいは常に入れ替わって、新陳代謝していますね。

…だそうな。
私がおばあさんになって、時代遅れのオノマトペを使っていたら、フランスおじさんのオノマトペのように、「何を言っているのかな〜」と思われてしまうかもしれないな…。



こんな本があった。

犬は「びよ」と鳴いていた—日本語は擬音語・擬態語が面白い (光文社新書) 犬は「びよ」と鳴いていた—日本語は擬音語・擬態語が面白い (光文社新書)
(2002/08)
山口 仲美

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以心伝心で愛を伝える?

フランスおじさんと、“Je t'aime”と“Je t'aime beaucoup”の話をしている時、こう聞かれた。

「日本人は、愛してるってあまり言わないでしょ?日本人は、相手に対してあまり強い気持がないの?」そして、「『言葉で言わなくても、わかるでしょ?』とか、『心が繋がっているから、そんなのは必要ない』っていう意味なの?」

どういうことなんでしょうね?

検索してみたら、「Sachi's言葉のマジック 第3回 愛のニュアンス」というコラムで下記の文章を発見。

日本人は「愛してる」と言う言葉をあまり使わないので、愛が薄いとか愛の感覚があまりないとか誤解される時もあります。

お〜、やっぱり。

フランスおじさんと話をしていると、日本人とか日本文化について聞かれる事がある。
私は、日本生まれの日本育ちで、周りはほとんど日本人なので、普段、“日本文化”について考えた事はない。
そんなだから、急に聞かれても、答えられなかったりすることも多い。

今回も、「う〜ん。そう言われてみれば、そうだね。どうしてかな〜?」だった。
恋人にも“愛してる”なんて言った事の無い人多いよね、…きっと。
私だって、おじさんから「愛してる」と言われても、「私も愛してる」なんて言えない。「私もヨ」までなら何とか言えるけど、心の中で、「わ〜ハズカシ〜」とか思ってしまう。

「愛してる」などという恥ずかしい言葉はナカナカ言えないからといって、世の中の恋人たちが、“愛が薄い”とか“愛が冷めちゃって言いたくない”とかいうわけではないと思う。
何故、日本人は「愛してる」と言う言葉をあまり使わないのかな?

g-telephone.com提供 連載コラム「国際電話の向こう側」 第四回【2001年11月30日】 ■ 以心伝心とは相手の心が読めることか?」で、下記の文章をみつけた。

肝心な事は言葉にしない。一番大事な用件さえ文脈だけで伝達しようとする。日本人は「愛してる」とちっとも言わない。(とよく言われる。)

上記のコラムでは、日本語は高文脈文化の言語だと説明している。
日本人は、“同じ文化を背景にした共通の思考パターン或いは慣習に基づいた判断を持っているから同じ日本人の考えが分かりやすい”ということで、相手の考えがわかっている時は、一々確認しないで、言わなくてもわかる事として話をする。


高文脈文化については、「第三回【2001年11月20日】 ■ 何故「○○さんいますか?」と言うか?」に、日本語と英語の「文脈文化の違い」として低文脈文化の言語(低文脈言語)と高文脈文化の言語(高文脈言語)の特徴をまとめてある。ここから、例を引用させて頂く。

日本人は電話をかけて相手を呼んでもらう時、「○○さんいらっしゃいますか?」と言います。
これで相手は○○さんを探してくれます。

皆さんは国際電話で外国に電話する時、何と言っていますか?
英語だと「May I speak to Mr. ○○?」と言いますね。
これは「○○さんと話したいんだけど話せますか?」です。 何が違うでしょう?

この例のように、日本語は、目的を直接的に言わなくても伝わる傾向があり、英語は目的をはっきり伝えないとコミュニケーションが成り立たない。
これが、日本語と英語の「文脈文化の違い」だという。
低文脈言語と高文脈言語の特徴として、このページには、詳しく書かれているけど、ザッと短くまとめると、

低文脈言語----伝達される言葉が全ての情報であり、語られない言葉は、ないのと同じ
高文脈言語----言葉以外の状況や文脈で情報を伝えることがあり、自分の意図を文脈で伝達できることを期待する

話を軟派な所へ戻して書くと、

低文脈言語----「愛してる」と“言う”ことで愛が伝わる、「愛してる」と言わないのは“愛が無い”のと同じ
高文脈言語----「愛してる」の“態度を見せる”ことで愛が伝わる、これが「愛してる」と言っているのと同じ

そういうことなのかな?

でもね、おじさんと私は、低文脈言語と高文脈言語の人なので、「言葉で言わなくても、わかるでしょ?」では、済まないんだよね。
「愛してる?」と聞かれて、「うん、そうだね」「好きだよ」だけでは、おじさんが寂しがる。
だからといって、「愛してる」なんて恥ずかしくて言えない。
でも、世の中は便利になって、メールってものが私を助けてくれた。
おじさんから“mon amour. Je t'aime.”というメールが来ると、私も“mon cheri. Je t'aime.”などと返す。
「愛してる」と言わなくても、おじさんは“愛されている”と感じてくれているらしい。
…文章にすると、なんとも恥ずかしい。
これが、日本人同士のカップルだったら、バカップルとか呼ばれるのだろうか?


上記のサイトの他に、高文脈言語・低文脈言語についてわかりやすく書かれたサイトを見つけたの。
>>語学学習|中国語|高文脈言語・低文脈言語


そして、本はこんなのがあった。

はじめての言語学 (講談社現代新書) はじめての言語学 (講談社現代新書)
(2004/01/21)
黒田 龍之助

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“とても愛している”は弱い意味

フランスおじさんが、「日本語や英語は、“愛してる”に“とても”とか“very”とか付けると強い意味になるけど、フランス語は、“beaucoup”を付けると弱くなるんだ。“Je t'aime”が一番なんだ。」と言った。

おじさんは、こう言う。

一番強い気持は、Je t'aime.(ジュ テーム)[あなたを愛してる]
友達みたいな気持で大好きは、Je t'aime beaucoup.(ジュ テーム ボクー)[あなたを“とても”愛してる]

そして、

フランス人に、日本語や英語のと同じように、「とても愛してる」や「I love you very much」のつもりで「Je t'aime beaucoup」というとがっかりする

“とても愛している”が弱い意味で、“愛している”が強い意味?

“Merci beaucoup(メルシー ボクー)”の“beaucoup”は、“Thank you very much”の“very much”と同じで、強調の意味。
でも、“Je t'aime.”の“beaucoup”は、強調のために付けるのでなくて、弱くする為に付ける?

う〜む、わからない。

“I love you very much.”や“I love you so much.”、“すごく愛してる”と言いたい時はどうするの?と聞いても、
「“Je t'aime.”が一番で、それ以上の、“愛しているはない”」と言う。

「だからね、すご〜く強い気持を言う時は?」と聞いたら、
おじさんは、「『Je t'aime.』と感情を込めて言う」だと…あ、そうなの。
どうしても、絶対に、“Je t'aime.”が一番らしい。


とても不思議。
何か詳しい資料はないかと検索してみた。

愛を語るというサイトに、フランス語の愛について説明があった。

ご存知のように、英語ではloveとlikeを区別しますね。でもフランス語ではどちらもaimerという動詞を使いますので、これが「好き」の意味にも「愛してる」の意味にもなります。強い愛情をあらわすか、そうでないかは、一緒に使う副詞や文脈で判断します。

このサイトには、他にも、“loveとlikeにあたるフランス語は?”など、詳しく書かれている。

このサイトを読んでわかったのは、フランス語ではloveとlikeもどちらも“aimer”という動詞を使うということ。
恋人にも、親や友達にも、“「好む」という動詞aimer(エメ)”を使って文章を作ると“Je t'aime.”になってしまうということらしい。


読んで、使い方はわかったとしても、“beaucoup”や“bien”という、“たくさん”とか“とても”とか、意味を強調する言葉を付けると、何故、意味が弱くなるのかは、ヤッパリ、感覚として?だな…。

でも、“とても愛している”の事は、フランス人に告白する時、「I love you very much」のつもりで「Je t'aime beaucoup.(ジュ テーム ボクー)」なんて言ってしまって、「な〜んだ友達なのか」なんて思われて失敗しないように、言葉の使い方の注意として覚えておいた方がいいみたいだね。

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